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日本生態学会誌
Vol. 66 (2016) No. 2 p. 489-500

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http://doi.org/10.18960/seitai.66.2_489

特集4 高等植物の道管流・師管流の計測技術と生態学における研究展開
要旨:
維管束系の生理学的理解は年々深まっているが、篩部構造にはいまだわかっていない点が多い。また生態学的理解、つまりなぜ現存する生物集団内で、特定の維管束系形態が維持されているかについては、アプローチ自体がほとんどなされていない。本稿では、適切な量の栄養を適切な時期に適切な部位に供給することのできた個体が自然選択または人為淘汰によって子孫数を増やしてきたという観点に立ち、篩部ショ糖転流について、生理学モデルを用いた生態学的理解を試みた。具体的題材としてイネを用いた研究を紹介し、ショ糖篩管輸送モデルをもとにイネ穂構造と収量の関係について考察した。イネを用いた事例研究では、まず現実の個体の穂形が代入された際に現実的な成長パターンを再現できるモデルが開発され、次に様々な仮想穂形をモデルに代入し収量比較がなされた。シミュレーションの結果として、個体収量はショ糖合成能や穎果総数だけでなく、穎果配置にも大きく左右されることが示された。モデルによって同定された収量を最大化する穎果配置は、現在広く栽培されている品種のそれであることが指摘された。さらに、穎果配置の大幅な改変をともなう改良品種では穎果総数が増加しても平均玄米重が減少してしまうという現象が実際に知られていたが、その原因がショ糖合成能の限界だけではなく、穎果配置構造の改変のせいでもあることが明らかにされた。

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