日本生態学会誌
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学術情報特集 大規模開発・大規模災害と自然保護の課題
歴史生態学的視点から見た日本最大のハナノキ自生地の成立要因、 およびリニア接続道路がその保全に及ぼす影響
菊地 賢
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2016 年 66 巻 3 号 p. 695-705

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抄録

岐阜県中津川市千旦林地区に位置する「岩屋堂ハナノキ自生地」は、絶滅危惧種ハナノキの日本最大の自生地として知られ、湧水湿地を中心に種々の絶滅危惧種の生育が確認されている、生物多様性の保全上重要な自生地である。現在、この湧水湿地の近傍を通過する自動車専用道路(リニア接続道路)の建設が予定されており、湿地環境の影響が懸念されることから、日本生態学会自然保護委員会を含む複数団体が、ルート再考の要望書を提出している。文献や聞き取りによってハナノキ自生地周辺の歴史や伝統的土地利用形態を調べたところ、ハナノキ自生地付近が大規模な湧水湿地を水源に古来から営まれてきた千旦林村の枝村「岩屋堂」であったこと、そこには屋敷・田畑を森林が囲む伝統的里山景観が成立していたこと、湧水湿地と森林の伝統的里山管理を背景に、日本最大のハナノキ自生地が形成されたことが示唆された。リニア接続道路はこの岩屋堂集落の中心を通過し、分断する。そのためリニア接続道路の建設は景観の破壊や集落機能の低下を通じて里山管理を衰退させ、ハナノキ自生地の保全にも悪影響を及ぼすことが懸念される。本稿では、歴史生態学的見地から岩屋堂集落の伝統的土地利用およびハナノキ自生地の成立について考察するとともに、今後のハナノキ保全研究の課題についても考察したい。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会
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