日本生態学会誌
原著
琵琶湖の流出河川、瀬田-宇治川のトビケラ群集
小林 草平野崎 隆夫竹門 康弘
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67 巻 (2017) 1 号 p. 13-29

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抄録

琵琶湖の流出河川である瀬田-宇治川の水生生物生息場としての特徴を理解するため、年間を通したトビケラ成虫の採集を行い、本州の他の河川とトビケラ種組成を比較した。瀬田-宇治川では、シマトビケラ科の4種とクダトビケラ科の2種が採集頻度や個体数において多かった。一方、国内に広く分布するいわゆる普通種とされる多くの種が、瀬田-宇治川では生息しないことが分かった。瀬田-宇治川と他の河川とでは、共通して多く生息する種が全体の中でわずかであり、種組成が大きく異なることが示された。各科の種数に基づき群集を比較したところ、瀬田-宇治川では湖由来のプランクトンを利用する濾過食者、安定した基質を生息場に好む造網型の種の割合が多く、堆積有機物を食物とする破砕食者や収集食者、細かい河床材料を利用する携巣型の種の割合が少なかった。湖下流における豊富なプランクトンの流下、流量の安定性、氾濫原などの止水生息場の少なさが群集に反映していると考えられた。また、各種の河川流程分布の情報を比較すると、瀬田-宇治川に生息する種は中流または下流が分布の中心である一方、生息しない種は上流が分布の中心かまたは上下流広域に分布する傾向にあった。琵琶湖は河川における中流から下流に位置するため、その下流の瀬田-宇治川では、中-下流だけで個体群が完結する種が有利であると考えられた。国内の湖流出河川の中でも瀬田-宇治川のトビケラ群集は特殊であり、これにはこうした河川における湖の位置の違いも影響している可能性がある。

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© 2017 一般社団法人 日本生態学会
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