日本生態学会誌
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原著
地表徘徊性甲虫類(オサムシ科、クビホソゴミムシ科)の後翅
─形態と 後翅長および各亜科の特徴
渋谷 園実 桐谷 圭治福田 健二
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2018 年 68 巻 1 号 p. 19-41

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抄録

地表徘徊性甲虫類(オサムシ科、クビホソゴミムシ科)は環境指標生物として認知されているが、その移動分散能力を検討するうえで重要な後翅について、オサムシ亜科に属するものや一部の種以外は明らかになっていない。そこで、各種の後翅情報を蓄積するために、千葉県の里山大青田の森(2011年〜2013年)を中心に、ピットフォールトラップとマレーズ・衝突板トラップを用いて調査した。後翅の形態と後翅長に関しては72種2,925個体、体長は78種4,883個体を測定し、解剖により飛翔筋の有無を確認した。また、翅型と生息環境との関係を検討した。72種のうち、60種が長翅型、8種が短翅型、2種が翅二型、2種が翅多型を示し、無翅の種は存在しなかった。長翅型の相対後翅長(後翅長/体長)から飛翔性を検討すると、0.9以上の種はその可能性が高く、0.75以下は低いと考えられた。短翅型は、棒状短翅と均等萎縮短翅、長め短翅がみられた。これまで地表徘徊性甲虫類の翅二型については、長翅と均等萎縮短翅が混在する二型が報告されていたが、その中間の翅型が認められた。また、翅多型はほとんど報告されていなかったが、本研究では翅多型が認められた。亜科別では、後翅の短翅化が進んでいるオサムシ亜科と、後翅に様々なバリエーションがみられるナガゴミムシ亜科、飛翔性の高いマルガタゴミムシ亜科とゴモクムシ亜科、後翅先端の多型が存在したアオゴミムシ亜科と結論できた。最後に、後翅の短翅化への過程に関して以下の仮説を提案した。翅二型と翅多型に出現する短翅がすべて均等萎縮短翅か、長め短翅のみで棒状短翅は出現しなかったことから、棒状短翅を後翅短翅化の最終点と考えた。

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