日本生態学会誌
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学術情報特集 北日本の環境アイコン「サケ」の保全活動を考える
産官学民との協働によるサケ産卵環境改善の取り組み
片岡 朋子布川 雅典田代 優秋谷瀬 敦村山 雅昭
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2019 年 69 巻 3 号 p. 219-227

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抄録

北海道札幌市を流れる豊平川において、産官学民協働活動として、2017年にサケ産卵環境の改善プロジェクトが行われた。本プロジェクトは行政主導ではなく、市民団体、建設会社および研究機関が主体的に活動してきた。その活動の結果、減少していたサケ産卵床の増加につながった。このような活動への参画組織とその活動体制がユニークであったことから、多方面から注目されることとなった。このような活動事例は、今後の自然再生や環境保全活動を行う際に参考となる。そこで、本稿では、本プロジェクトに参画した個人や組織の、つながりと役割に着目して、本活動が数年にわたって継続できた要因について明らかにした。2015年から本プロジェクトに至る経緯は、協働活動参加者に対して2018年10月に行われた対面式のインタビューにより収集し記述した。2017年の本プロジェクトまでは、2015年は市民団体のみ、2016年には研究機関が加わらない協働での産卵環境改善の試みが行われた。その後、2017年にはこれが産官学民の協働活動に発展し、活動する様になった。本活動が発展した要因として、活動へ参画する個人のつながりである特定のローカルコミュニティの人間関係が重要であった。これに加えて、コミュニティ間の連携があったこと、また個人や組織の役割が、明確ではないものの活動内容に応じて柔軟に変化したことが要因として考えられた。さらに、「小さな自然再生」といわれる自然再生活動の定義に比して、本研究のプロジェクトは規模が大きいものの、行政主導の自然再生事業に比べると小規模である。このため、本プロジェクトは「中くらいな自然再生」といえることも明らかになった。既存の活動にもこの「中くらいな自然再生」といえる活動があるが、本プロジェクトは、多様な主体が対等な立場で参加し活動していることが、類似する活動と異なる点であった。以上のことから、多様な主体が対等な立場で参加し、役割を柔軟に変化して活動できた活動形態が今後の協働活動の調整手法を考える上で非常に重要であると示唆された。

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