抄録
本稿の目的は、再生可能エネルギー事業による環境影響について、科学的不確実性と価値の多様性を踏まえた合意形成の方法を示すことである。理論的な整理の方法としてリスクガバナンスの考え方を応用した上で、事実認識と価値判断両方が一意に定まらない場合の合意形成手法として熟議の可能性をしめした。改正された「地球温暖化対策の推進に関する法律」で示されている実行計画とポジティブゾーニングの推奨がリスクガバナンス上も適切であることを示した上で、具体的な課題について検討した。生態学の専門家が貢献する方法として、生態系や生態系サービスについての知見を提供する以外にトレードオフへの対応やネイチャーポジティブの可能性について検討した。