植物染料を用いて繊維を緑色に染色する技術は,従来は鉄を発色補助剤として用いているが,色合いの濃さと耐光性の観点から改善すべき余地がある.我々は鉄と同じ遷移金属元素であるバナジウムを発色補助剤(媒染剤)として用いた新しい染色法の開発に取り組んでいる.濃度5×10-3 mol/Lで処理したバナジウム先媒染ウールを濃度50%owfの植物染料ヤシャブシで染色すると,耐光堅ろう度の高い濃緑色に染色できた.バナジウム先媒染ウールをESR分析したところ,オキソバナジウム錯体として繊維表面に付着していることがわかった.バナジウム先媒染ウールは皮膚への刺激性が低く,環境負荷を軽減可能な新しい媒染剤として有効であることが示された.