水系洗浄における油性汚れの洗浄性が低いという課題を解決するために,油相に高級アルコールを用いる希薄エマルション洗浄における油性汚れの洗浄性について検討した.まず,極性の異なる油性汚れの汚染布を作成し,ターゴトメーターを用いた洗浄試験を行った結果,無極性と中極性の油性汚れに対して,界面活性剤単独系よりもエマルション洗浄が高い洗浄性を示した.一方で,強極性の油性汚れの場合,エマルション洗浄の方が低い洗浄率を示した.これは界面活性剤による乳化に関して,高級アルコールが強極性油性汚れと競合したためと考えられる. エマルション溶液の表面張力を測定した結果,高級アルコールを混合することによって界面張力が減少した.以上のことから,無極性と中極性の油性汚れでエマルション洗浄によって洗浄性が高まったのは,表面張力の低下に見られるように界面活性が高まり,乳化及びローリングアップ作用が促進されたためと推察される.