雪氷
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酸素同位体比を用いた山岳地積雪の堆積時期推定
遠山 和大鈴木 悟郎佐竹 洋川田 邦夫飯田 肇
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2005 年 67 巻 4 号 p. 319-330

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抄録

北アルプス・立山周辺の,標高の異なる3地点(室堂平:海抜2450m・弥陀ヶ原:1930m・雷鳥バレースキー場:1200m)において,2001年3~4月に積雪の断面観測を行い,地面から雪面にかけて連続的に積雪を採取した.また,2000年12月~2001年3月まで,富山市において降水を採取した.これらの試料について,そのδ18O値を測定した.
各地点の積雪と富山市降水のδ18O値は大きく違っていたが,各地点における積雪のδ18O値の鉛直分布と,富山市降水の経時変化パターンは良い一致を示した.富山市降水のδ18O値の経時変化に見られる極大・極小のそれぞれが,各地点の積雪δ18O値の鉛直分布における,どの極大・極小に対応するかを同定し,それを元に日付を割り付けた.この事から,2日~1週間程度の分解能で,積雪の全層にわたって堆積時期の推定が可能になった.この方法で得られた日付は,黄砂層によって同定された日付と良く一致した.
同じ日の降水のδ18O値を標高毎に比較したところ,δ18O値と標高の間には非常に強い負の相関があり,δ18O値の変化率は-0.4~-0.2‰/100mという値を取った.しかし,春先に太平洋側を低気圧が通過するとき,両者の相関が悪くなり,変化率も-0.1‰/100mと小さくなる場合があった.このような低気圧の場合,雲の流れが冬期に一般的な富山→室堂平の方向とは異なる可能性が示唆された.

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