雪氷
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多雪山地流域における融雪期のCl-収支と地中水の流出過程
山崎 学石井 吉之小林 大二石川 信敬柴田 英昭
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2005 年 67 巻 6 号 p. 477-491

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抄録

北海道北部の寒冷多雪山地流域において,2000年の融雪期に,積雪全層水,積雪下面流出水,土壌水,地下水,河川水のCl-濃度並びに積雪下面流出水,河川水の流出高を観測した.その結果,流域内の標高の異なる2地点で観測された積雪下面流出水の流出高並びにCl-負荷量は異なる値を示した.しかしながら,積雪下面流出水のCl-負荷量は,融雪期間の積雪下面流出水の全流出高に対する融雪開始からの積算流出高の割合に依存していた.この結果を用いて,融雪期間中,1週間ごとの水・Cl-収支を求めた.融雪全期間では,水収支はほぼ釣り合ったのに対し,Cl-収支は流出量が流入量の1.64倍となった.ハイドログラフの2成分分離を行った結果,融雪最盛期において河川流量に占める地下水の割合は72%を占めた.このように地下水の流出が多いため,Cl-の流出量が流入量より多くなったと考えられる.さらに,ハイドログラフの3成分分離を行った結果,河川流量が大きく変化しても河川水に占める古い水の割合は安定していた.また,混ざり水のCl-濃度変化から,一部の積雪下面流出水は一旦地中に浸透した後,遅れて河川に流出していることが示唆された.

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