2007 年 69 巻 4 号 p. 445-456
2006年2月10日,秋田県仙北市の乳頭温泉鶴の湯の裏山の3カ所において相次いで発生した乾雪表層雪崩により,1名が死亡,16名がけがをした.雪崩発生の翌日に現地調査を行い,雪崩の状況やデブリの状態などを明らかにした.また,同日に積雪断面観測を行い,発生日未明から積もり始めた新雪層の構造を明らかにするとともに,ハンドテストによって弱層の存在を確認し,その勇断強度を測定した.さらに,1週間後および3月下旬の融雪期にも現地調査を行った.また,積雪変質モデル(SNOWPACK)を用いて積雪構造と積雪安定度のシミュレーションを行った.これらの結果から,この雪崩は,強い降雪が続く中で新雪層の積雪安定度が低下し,その内部に何らかの原因で生じた弱層をすべり面として発生したと考えられる.