2007 年 69 巻 4 号 p. 481-488
天井の一部に開口部を設けた低温室を利用して積雪に形成される降雪粒子に起因する弱層形成の観測を行った.自然の降雪を天井開口部から-5℃前後に保たれた低温室内に取り込み,水平の実験台の上に降り積もらせた.このようにして1日ないし2日間に形成された積雪層を観測し,弱層の有無を調べた.弱層がある場合は,並行して稼働させている降雪粒子自動観測装置と降水量計の記録から,弱層形成に寄与した降雪粒子の種類や大きさ,降雪の強度などを推定した.その結果,これまで雪崩現場で観測されているように,大きな霰が集中して降った場合や雲粒の少ない広幅六花系の結晶が降った場合に弱層ができることを確認するとともに,その時の降雪粒子の特徴を明らかにすることができた.また,得られた降雪粒子の特徴や強度などから,この種の弱層の検知の可能性について考察した.
このような人工的な環境場で弱層形成を観測する本手法は,降雪粒子の種類と大きさ,降雪量など,現場では変質の後でしか知り得ないことについても観測可能なことから,今後の雪崩弱層の研究に役立つものと考えられる.