サービソロジー
Online ISSN : 2423-916X
Print ISSN : 2188-5362
巻頭言
価値共創の場としての学会誌
新井 民夫
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2014 年 1 巻 1 号 p. 1

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サービス学会の設立から1年半経ち,学会誌「サービソロジー」が発刊されることとなった.うれしい限りである.「学会」の明確な定義は無いが,日本学術会議は協力学術研究団体学会の指定にあたって「学術研究の向上発達を図ることを主たる目的とすること」他の条件を定めている.その一つに,「学術に関する機関誌を継続して年1回以上の発行」がある.サービス学会は和文誌ならびに英文Journalの創刊によって学会としての形態が完成するのである.

学会はサービス業である.サービス提供者である学会は知的コンテンツを提供し,会員は対価として会費を納める.多くの学会は講演会,国際会議,講習会,見学会などの事業を多数開催し,論文誌,学会誌,News Letterなどを介して,サービス提供力の強化に努め,学会の拡大を図ってきた.本会も同様のコンテンツを用意し,多くの顧客を掴もうとしている.会員増によって事業推進機能を活発化しなければ,安定的な経営に至らない.そう考えてきたし,実際,量的拡大を志向している.だが,それで本当に良いのであろうか.

サービスは価値共創である.そうであるなら,学会組織側だけがサービス提供者であると決め付けることは意味がない.サービス学会が提供するのは価値共創の場であり,そこに会員が積極的に参画し,会員相互に刺激し,議論することで,従来,気付くことも無かった価値を,発見し,説明し,生活や事業に適用していくことが求められる.

では価値共創はどのような場でなされるのだろうか.2013年10月に開催された第1回ICServではValue Creation Modelsを基に"Serviceology: its concepts, theories and applications"が深く議論された.第2回国内大会には,「サービス学におけるグランドチャレンジワークショップ」として,サービス学が挑戦すべき大きな課題(グランド・チャレンジ)を相互に持ち寄り検討する.そして,それらの要点は学会誌「サービソロジー」に掲載される.また,論文や提言に対しても学会誌は談論の場を提供する.サービス学会の会員は,サービスが価値共創であることを認識して,談論の輪に参加して欲しい.

本学会は企業と研究組織との連携を重要視している.それはサービスは既に存在する人間活動だからであり,我々の生活の質を大きく決定付ける経済活動だからである.ただし,個々の生活者の日常行動が地球規模の環境問題や国際問題に直結するグローバル社会において,日々のサービス提供活動を利益追求の狭い視野だけで理解することは許されない.広い視点を会員間で構築することが連携の目的となる.

本学会の強みは,サービスという概念がまだ定型化されていないところにある.いわんや「学会サービス」をサービスを専門とする本学会が新たに創出しないで誰が出来ようか.学会が提供するサービス,顧客満足度の高い学会サービス,そして学会員同士が相互に共創するサービスを創出していこうではないか.

執筆者略歴

  • 新井 民夫

サービス学会 会長(芝浦工業大学)

 
© 2017 Society for Serviceology
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