2016 Volume 3 Issue 1 Pages 42-43
2015年12月7日に東京コンファレンスセンター・品川にて,JST RISTEX 問題解決型サービス科学研究開発プログラム(S3FIRE)第6回フォーラムが開催された.本プログラムは,日本発のサービス研究開発プログラムとしてサービスにおける具体的な問題を解決する技術や方法論を開発するとともに,サービス科学の基盤を構築すること,さらに研究開発コミュニティを形成することを目的として活動している.一般の方々に向け,プログラムおよび採択されたプロジェクトの活動状況および成果などを広く発信するために,毎年秋に開催してきたフォーラムであるが,定例開催は今回で最後となる.
6回目の開催となった本フォーラムでは「サービスイノベーションをどうデザインするか?」のテーマのもと,今後のサービス研究および実践をどのように進めれば良いかについて,参加されたみなさまとともに考えていくことを目指した.
今回のフォーラムには240名の方にご参加いただいた.企業・一般からの参加が半数近くを占め,首都圏以外からの参加者,経済学のみならず多くの社会科学系の研究者など,例年よりも多様な専門性を持った方々に参加いただき盛会となった.
今回の講演プログラムは,本プログラムおよびサービス科学の“時の移ろい”をコンセプトに「Just done(終了報告)」,「Just now(現在の取り組み)」,「From now on(新たな活動を目指した取り組み)」という3部構成とし,採択プロジェクトによる活動成果報告,基調講演,ポスターセッション,パネルディスカッションが行われた.プログラムを表1に示す.

開会は,本プログラム総括である土居 範久氏(慶應義塾大学名誉教授)より, 5年にわたるプログラムの活動の全体像が俯瞰的に説明された.引き続き,本フォーラム目玉の第1弾として,平成24年度に採択された5つのプロジェクトからの成果報告がおこなわれた.各界で活躍される著名な研究者が代表者となり,推進されたそれぞれの研究開発プロジェクトは,扱う対象・テーマがバラエティに富んでいる.ICTを活用したサービス事例からサービスにおける価値に迫る研究など,多彩な取り組みとその成果が紹介され,いずれも会場からの関心を惹いた.
3.2 第2部:Just now昼を挟み,第2部が開始された.午後冒頭では,本フォーラム目玉の第2弾である,松波 晴人氏(大阪ガス行動観察研究所 所長 兼 株式会社オージス総研行動観察リフレーム本部 技術開発部長)による招待講演が行われた.わかりやすい講演に会場がどっと沸く場面もあり,あっという間に60分が過ぎた.イノベーションに関する現状と課題がすっきりと整理され,行動観察の重要性と,そこから導き出されるイノベーションの可能性が感じられた.会場の多くの方から「ためになった」「教育や研修にすぐ応用したい」などの感想が寄せられた.
続いて,新井 民夫氏(芝浦工業大学 教授/本プログラム総括補佐)より,本プログラム全体の成果創出に向けた取り組みとして,サービス学研究のフレームワークが紹介された.この取り組みは大変な難産であるのだが,それを感じさせない大変すっきりとまとめられたものであった.この講演には「『サービス学とは何ぞや?』が理解できた」などの感想が寄せられ,講演内容が多くの方に受け入れられていた.

その後,ポスターセッションが行われ,各プロジェクトは,参加者と直接やりとりしながら,研究開発の状況,成果等の説明をおこなった.ポスターセッションは,次のプログラムが始まる時間になってもまだまだ話し込む参加者が見られるほどの盛況となった.

フォーラムの目玉の第3弾である原 辰徳氏(東京大学 准教授)による講演が行われた.今後,サービス学が目指すべき方向性を検討し,次期サービス科学研究開発プログラムを創設するために,気鋭の若手研究者及び実践者で精力的に取り組んだ「サービス学将来検討会」の活動成果報告が行われた.
この報告を踏まえ,村上 輝康氏(産業戦略研究所/プログラムアドバイザー)をモデレータとして,「今後,サービス研究はどのように社会や産業に貢献していくべきか」をテーマにパネルディスカッションが行われた.パネリストとして,松波氏,原氏に加え,同検討会のコアメンバーである柴田 吉隆氏(日立製作所 主任デザイナー),竹中 毅氏(産業技術総合研究所 主任研究員),西野 成昭氏(東京大学 准教授)が登壇された.スムーズな進行のもと,小気味よく,時に熱く,活発な議論が交わされた.会場からの鋭い質問に対しては,村上氏,原氏がキレのあるご回答をされていた。
サービスイノベーションについて未来への展望を語る原氏の報告は情熱を感じさせるものであり,続くディスカッションでの各パネリストの問題認識の違いは,さらに会場の知的好奇心を刺激していた.

本フォーラムでは,会場とのインタラクションなどもあり,ご参加いただいたみなさまの交流が深められた.フォーラムは「共創」的に進められ,ご参加いただいたみなさまのお陰をもって素晴らしいフォーラムになった.
日本で最初のサービス科学研究開発プログラムであるS3FIREも2016年度は,活動の最終年度を迎える.これまでの活動で得られた成果を広めていくとともに,プログラム関係者一同で,今後新たなサービス科学研究開発プログラムにつながる取り組みに邁進する.今後とも引き続きみなさまからのご協力,ご支援を賜りたい.
当プログラムでは,プロジェクトの成果や社会実装に向けた幅広い展開など,さまざまな情報を発信する.http://www.ristex.jp/servicescience/にてご確認いただきたい.
〔中島 正人(科学技術振興機構)〕