サービソロジー
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会長挨拶
サービス研究とサービス学への期待
山本 昭二
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2016 年 3 巻 3 号 p. 34

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この度,第3期の会長を務めることになりました.多くの方々に推挙して頂き,大変光栄なことと思っています.創立間もない学会の体制を確立していく時期に,仕事ができることを考えると身が引き締まる思いでおります.

私は,現在,関西学院大学のビジネススクールで教えていますが,私がサービスマーケティングの研究を始めたのは1983年に大学院に入学した頃です.まだ日本ではサービスマーケティングの研究者も少なく,海外の文献を元にして研究を続けていました.サービスマーケティングの研究は,70年代にはアメリカで基礎が作られていましたが,理論的な検討と実務の間の距離があるままとなっていました.

80年代になると,サービス品質は知覚品質として捉えられ,従来のマーケティングの理論や技法が修正され,顧客が関わる部分の不安定性には様々な対応策が提案されるようになってきました.一方,社会経済の大きな変化,特にポスト工業社会,経済のサービス化の研究は,インターネットが実用に供されるに従って新しいタイプの経済社会を作り出してきました.ポスト工業社会が現実に私たちの目の前に現れてきたのです.

90年代の後半には,サービスマーケティングの研究成果は,従来のサービス業を対象とするだけではなく,製造業にも影響を与え始めていました.この流れは,サービス経済に対する先進諸国が持っている懸念や問題点が出発点になっており,製造業が経済において小さくなる中で,生産,消費,労働がどのように変化するのか関してバランスの取れた議論がされてきました.

我が国でもこのような問題点は指摘されてきましたが,サービス業の生産性を高めることで問題が解決するのではないかという一面的な見方が支配的で,サービス業や流通業の側からの主体的なアプローチが少なかったのも大きな問題でした.

消費者に対する理解を最優先にして顧客満足や顧客の維持をどのように行うのか,その手段としてサービスはどのように役立つのかといった視点や,顧客との関係の中から利益を上げるためにどのような製品を開発するべきなのかといった視点が弱かったのは残念でした.

こうした事態に対応するためにも「サービス」に関する総合的な学問分野が必要とされています.生産性,品質,イノベーションといった問題に対応できる体制を整えることが求められています.そのためには,従来のサービスに関する研究が,既存分野の研究をサービスに適用するだけになっていた点を改めなければいけません.

この学会が標榜している「サービス学」は,まだ十分にその機能を発揮しているとは言えませんが,海外の研究動向にも気を配りながら我が国独自のアプローチを確立できればと思っています.これからは,関連する学会にも呼びかけをしてできるだけ多くの研究者や実務家に参加をして貰えるように一層の努力をいたします.

学会員の皆さんには,自分の研究分野での研究テーマと本学会の持つ役割が有意義な形で関係を持つことができるように活動をお願い致します.

著者紹介

  • 山本 昭二

関西学院大学 専門職大学院 経営戦略研究科 教授

 
© 2019 Society for Serviceology
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