環境科学会誌
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一般論文
日本全域におけるパッシブエアーサンプリング法による有機塩素系農薬類の広域同時モニタリング
小原 裕三清家 伸康西森 基貴益永 茂樹細見 正明
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2010 年 23 巻 1 号 p. 3-17

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抄録

残留性有機汚染物質(Persistent organic pollutants: POPs)に分類される有機塩素系農薬(Organochlorine pesticides: OCPs)は,日本では1970年代初めに農薬登録が失効した。しかし,OCPsは未だに数pg/m3から1,000pg/m3程度で大気中から検出され,減衰の傾向は年々緩やかになっている。日本全域の大気中OCPsの分布を同一手法で同時に試みた例は,これまでほとんど無かった。これらOCPsの大気中濃度分布を明らかにするため,2008年3月21日から5月16日の8週間,PUF (Polyurethane foam)ディスクを用いたパッシブエアーサンプラー(Passive air sampler: PAS)を,日本全域の54ヶ所に同時に設置し,評価を行った。
各OCPsの大気中濃度(幾何平均:範囲pg/m3)は,chlordanes(146:12-1,290)>endosulfans(70:14-269 )>HCHs(46:12-405)>hexachlorobenzene (42:21-107)>DDTs(23:2.6-579)>drins (11:2.7-11)>heptachlors(7.6:0.44-37)>mirex(0.24:<0.082-0.88)であり,地域による特異性が認められ,アクティブエアーサンプラー(Active air sampler: AAS)を用いて行った環境省の大気モニタリングデータの結果と各OCPsの濃度レベルと順位は一致した。
OCPs分解物や異性体の解析により放出起源を,またバックトラジェクトリー解析で放出地域の推定を行った。例えばDDTsの場合には,p,p'-DDT/p,p'-DDEの比から過去に日本で使用されたDDT製剤の揮散の寄与が大きいことなどが明らかとなった。このように,PASを用いた同時モニタリングは,広域の大気中濃度分布や放出起源,放出地域の評価に期待できる。

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