環境科学会誌
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一般論文
地球温暖化対策税による産業・家計への影響
-東京都税制調査会での検討案の評価-
杉野 誠有村 俊秀森田 稔
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2012 年 25 巻 2 号 p. 126-133

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抄録

世界各国で温暖化対策が進む中,我が国でも同対策の導入に向けた動きが本格化している。電力部門からのCO2排出量は,日本全体の排出量の1/3を占めている。一方,民生部門からの排出量のうち,約6割が電力使用によるものである。よって,同部門での対策を促す上で,化石燃料の他に電力に対しても消費段階で課税することが望ましい。しかし,化石燃料や電力は,産業や家計にとっては必需品であるため,課税によって税負担が強いられる。
本研究では,東京都税制調査会によって検討された「2,049円/t-CO2」の税率を化石燃料と電力にそれぞれ課した場合の産業と家計への短期的な影響について,産業連関分析を用いて分析した。分析の結果,課税による産業全体の影響は0.33%の負担増であり,軽減措置を実施した場合では0.30%まで緩和された。業種別では,一部の業種で高い価格上昇率となったが,大多数の業種では1%未満とそれ程大きな影響は見られなかった。一方,家計への影響は,所得階層別では,低所得層ほど課税による家計費上昇率の値が高く,最も高い層と低い層の間に約1.5倍の差があることが分かった。さらに,地域別では,寒冷地ほど課税による家計費上昇率が高い傾向が見られた。こうした家計費上昇率が高い家計の特徴として,家計支出に占める光熱費の割合が高いことが見られた。

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© 2012 社団法人 環境科学会
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