環境科学会誌
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一般論文
物質管理の基本方策の類型化とその特徴把握(その1)
-物質管理の変遷と管理方策の類型化,曝露防止・クローズド化・管理体制の整備の特徴-
田崎 智宏石塚 隆記滝上 英孝
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2012 年 25 巻 4 号 p. 259-279

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抄録

近年,化学物質管理の強化と併行して,リサイクル製品の安全性管理など,資源循環における物質管理の必要性が高まっている。物質は一方で資源としての側面を有し,他方で一定の有害性を有するものを含んでおり,その両面をふまえた包括的な物質管理方策が求められつつある。本報では,既存の物質管理に関連する151の法制度等をレビューし,第一に,管理対象物の拡大,保護の対象の拡大,対象ライフステージの拡大と全ライフサイクルを考慮した物質管理への展開などといった物質管理の変遷を確認した。
 第二に,44法制度等における829の物質管理規定を詳細に整理・類型化した結果からは,物質管理の基本方策として,①曝露・被害防止,②フローのクローズド化,③チェックゲート管理,④情報管理(情報伝達とトレーサビリティ),⑤資源確保・利用,⑥管理体制の整備の6種類(小分類では7種類)があることを確認した。動脈側と静脈側では物質等の同定可能性に違いがあり,チェックゲート管理と情報伝達の適用性が静脈側で低くなること,曝露・被害防止とクローズド化は消費者使用のライフステージで特に少なく結果として情報伝達の比重が増していること,消費者使用の段階を除けば曝露・被害防止と管理体制の整備は全てのライフステージにわたって適用がされていることなどを示した。
 第三に,①②⑥の特徴等として,①②については,防止もしくは遮断の措置と,それら措置の確認手段から管理方策が構成されており,管理の必要性の理解,管理状況の確認のしやすさ,管理物質が特定しやすいことが,管理の有効性や適用性に影響を及ぼすと考えられた。②についてはさらに流出防止,流入防止,変化防止の3種があった。⑥は全ての物質管理の基礎となり,その内容は,管理目標の設定,責任・役割分担の明確化,管理能力・意識の向上,管理に必要な設備・システム等の整備の主に4つから構成されていた。③~⑤については次報で述べる。

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© 2012 社団法人 環境科学会
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