2014 年 27 巻 6 号 p. 347-353
大企業を中心とした自主的な環境取組みが広がりをみせるなか,中小企業の環境問題への取組みは,依然として大企業に比べて遅れていることが指摘されている。本研究では,自主的環境取組みの中でも特にISO14001認証取得に焦点を当て,認証取得のインセンティブと,さらに認証取得が実際の環境負荷の削減をもたらすのかという点について,先行研究では行われてこなかった大企業と中小企業との比較という視点から分析を行った。
分析の結果,主要販売地域が海外市場であるかどうかという点については,大企業事業所のISO14001の認証取得インセンティブの要因とはならないが,中小企業事業所にとっては取得インセンティブとなるという点が明らかになった。また,中小企業事業所のISO14001認証取得インセンティブが大企業事業所に比べて弱いという結果が示された。しかし,この2つのタイプの事業所の間では,ISO14001の認証取得が大気汚染物質排出量,自然資源利用量,固形廃棄物排出量,廃水排出量に対する削減効果に差がないことが明らかになった。このことから,現在,各地方自治体で導入されている環境マネジメントシステム導入支援策は,中小企業の自主的取組みを促進し,環境負荷削減を果たす上で,効果的な手段であると考えることができる。