環境科学会誌
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一般論文
内部標準物質を用いたLC/MS/MSによる水道水中の陰イオン界面活性剤の直接注入法
古川 浩司 川口 寿之工藤 清惣中澤 智子山田 悠貴船坂 鐐三奥村 明雄
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2017 年 30 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

内部標準物質を用いた液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)による水道水中の陰イオン界面活性剤の直接注入法の検討と水道水質検査としての妥当性を評価した。検討の結果,LC/MS/MS測定による直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(以下,「LAS」と略)測定強度のイオンサプレッションが,水道水中に存在するカルシウムイオンに起因して発生することを確認した。このため,LAS-C10~C12の内部標準物質にLAS(C13)-C12を,LAS-C13~C14の内部標準物質にLAS-C8を用いて,各LASのイオンサプレッションによる測定強度の低下を補正した。また,総硬度が異なる8種類の水道水及び原水に対してLAS-C10~C14(各LAS濃度4.0 µg/L)の添加回収試験を行った。その結果,水道水におけるLAS-C10~C14の回収率は72.2~122%であり,良好な回収率を得ることができた。一方,水道原水中のLAS-C14の回収率は59.0~68.1%と低い結果であった。次に,水道水(LAS濃度4.0 µg/L:5日間,各5併行)に対する妥当性評価の結果,併行精度3.54%,室内精度7.47%,回収率95.2%の妥当性評価が得られ,厚生労働省が通知する「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の目標値を満たした。これらの結果は,本分析法が水道水中の陰イオン界面活性剤の定量分析に適用可能であることを示している。

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