環境科学会誌
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一般論文
車室内ダスト中の指標元素を利用したFE-EPMAによる汚染物質のスクリーニングと起源解析
徳村 雅弘 山取 由樹畑山 瑠莉香根岸 洋一益永 茂樹
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2017 年 30 巻 1 号 p. 34-43

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抄録

車室内におけるダストを介した汚染物質の曝露は,不揮発性および準揮発性の汚染物質にとって重要な曝露経路である。ダストに含まれる汚染物質には有機物質だけでなく無機物質も含まれるため,それらの測定には有機・無機物質ごとに煩雑な前処理に加え,別々の分析機器が必要とされる。ダストの汚染実態の把握のためには,より簡便な測定法の開発が望まれている。また,より効果的な汚染物質対策の提案のため,汚染物質の起源解析法の開発が求められている。本研究では,単一の前処理および分析機器を用いた,車室内ダスト中の有機および無機汚染物質の同時スクリーニングおよび起源解析法を開発するため,電界放出型電子プローブマイクロアナライザ(FE-EPMA)を用いて車室内ダストに含まれる汚染物質の指標となる元素の元素分析を行った。本研究では準揮発性有機化合物である臭素およびリン系難燃剤を有機汚染物質の例として選定した。また,ダストサンプルをFE-EPMAにて分析するための最適な試料台への固定方法を検討した。固定にかかる時間,測定結果の再現性,電子線照射による安定性などの観点から,アドフィックス樹脂がダストの接着剤として最も適していた。二次電子像などからダストの形状に関する情報(繊維状,粒子状など)が得られ,カラーマッピングイメージよりダストに含まれる元素やその濃度分布に関する情報が得られた。臭素およびリン系難燃剤の指標元素として臭素(Br)とリン(P),重金属類の指標としてアンチモン(Sb),鉛(Pb),クロム(Cr)を選定し,FE-EPMAにより元素分析を行うことで,難燃剤と重金属類の含有濃度に関する情報が得られた。また,スクリーニングに用いた試料を用いてダストを構成する元素の定性分析を行うことで,難燃剤の汚染源に関する情報が得られた。以上より,本方法が車室内ダスト中の有機および無機汚染物質の同時スクリーニングおよび起源解析法として有用であることが示された。

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