J-STAGE トップ  >  資料トップ  > 書誌事項

環境科学会誌
Vol. 30 (2017) No. 2 p. 44-56

記事言語:

http://doi.org/10.11353/sesj.30.44

一般論文

自然災害は,災害廃棄物の散乱や家屋解体に伴うアスベスト飛散等,様々な環境リスクを伴う。こうした災害環境リスクを管理する行政主体は,行政リソースが確保しにくい中で様々な災害対応業務にあたる必要がある。このとき,どこまで,どのように災害環境リスクを管理していくべきかについての,市民の考えをふまえた基本的方針は指針等で示されていない。本稿では,こうした災害環境リスクの管理方策の実施検討に役立てるため,大規模自然災害時において環境リスクを管理することに対する市民の態度とその規定因を明らかにすることを目的に,東日本大震災の被災者を対象としたwebアンケート調査を実施し,共分散構造分析等による多変量解析を行った。解析にあたっては,従来の計画行動理論を参考にしつつ,リスク管理行動の主体が行政(=他者)である点,配慮行動ではなくリスク回避行動である点,「災害時」という特異な状況における行動である点に留意し,仮説モデルを設定した。その結果,多くの市民が災害に伴う多様な環境リスクを認知していること,災害時には環境影響を許容する傾向があり,男性ならびにより健康な人の方がその傾向が強いことが示された。また,快適さの損失に係る環境リスクに対する管理の優先度は,平時と比較して災害時は大幅に下がることが分かった。一方で,健康被害を想起される環境リスクについては,災害時だから仕方なく受け入れるという気持ちにならず,管理して欲しいと考えられるものであり,特に留意すべきであることが示唆された。また,快適さに関する環境リスクについても,健康状態の悪い人は災害時には仕方がないという気持ちが働かないことから,適切な配慮が必要であることが示唆された。

Copyright © 2017 公益社団法人環境科学会

記事ツール

この記事を共有