環境科学会誌
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都道府県による温室効果ガス排出削減計画書制度の計量分析—製造業部門の定量評価—
矢島 猶雅有村 俊秀
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2017 年 30 巻 2 号 p. 121-130

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抄録

近年,自治体レベルの温室効果ガスの排出量削減政策が普及している。中でも,「地球温暖化対策などに係る計画書制度」(以下,計画書制度)が多くの都道府県で共通して導入されている。当該制度は,一定規模以上の事業所に対し温室効果ガス排出量削減のための具体的な計画と,その結果報告を定期的に義務づける。更に,計画もしくは報告の内容に対し,自治体が助言などを行う規定も付加されている場合が多い。このように,計画書制度は自治体レベルで事業所に排出量削減についてモニタリングと補助を行う枠組みである。しかし,制度の効果には疑問の声もある。各事業所の排出量削減の水準について罰則が存在していないのである。計画書制度において罰則と呼べるものは計画/報告の未提出や虚偽報告に対するものに限られる。すなわち,実際に排出量削減が実現するかは定かではない。そこで,本研究では計画書制度が削減効果を有するか否かについて検証を行う。具体的には,1990年度から2013年度の製造業部門の都道府県レベル集計データを用い,制度の有無による排出量の変化を計量分析した。その結果,計画書制度を導入した都道府県では,平均的に約8%から約10%製造業部門の従業者一人当たり排出量が削減されていることが示唆された。計画と報告,及び省エネ指導という枠組みが有効な可能性を示唆する結果である。

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