環境科学会誌
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一般論文
淀川の水稲移植後渇水,スーパー出水,秋季高濃度流出に対する高頻度農薬調査—弾力的で余裕のある面源負荷としての農薬流出調査の必要性—
海老瀬 潜一 川村 裕紀
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2017 年 30 巻 5 号 p. 282-295

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抄録

水田施用農薬の流出調査は一筆水田や,水田群排水を受ける小規模流域農地河川で灌漑期間限定調査として行われることが多い。淀川のような大規模流域河川や湖沼・ダム湖では灌漑期間外も含む長期調査として実施されることはほとんどない。温暖化の進行で渇水や洪水の水文条件の頻発化が懸念される状況下で,近畿圏1,400万人の水道原水供給源の淀川において,精度の高い農薬流出負荷量を算定するため,2013年4月22日~11月21日の長期間に3日ごとの高頻度定時調査を行った。平年並み年降水量の2013年の淀川は,水稲移植後の長期渇水,6月下旬2連続豪雨出水,9月16日の1318台風による60年ぶりのスーパー出水,10月中下旬3連続出水と,長期低流量と大規模な連続出水の極めて稀な水文条件であった。ただ,3日ごとの高頻度調査でも,9月3~15日の2番目の出水規模の流量ピーク付近は捉えられなかった。7ヶ月間調査での農薬の調査期間全負荷量と流出率などを算定したほか,これら4つの水文条件期間の農薬の流出特性と,流出負荷量の調査期間全負荷量に対する位置づけを明らかにした。このように,農薬流出の高精度の年間負荷量や流出率の算定には,大規模流域河川の淀川でも3日ごと程度の高頻度調査で,大規模な出水の詳細調査や,収穫後の残留農薬の豪雨流出への調査延長など,柔軟に対応できる弾力的な調査体制の構築が必要なことを明らかにした。

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