環境科学会誌
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2016年シンポジウム
大分県別府市の小規模地熱発電ステークホルダーの共通認識に着目した潜在的社会ネットワークの可視化
木村 道徳増原 直樹馬場 健司
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30 巻 (2017) 5 号 p. 325-335

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抄録

持続可能な地域資源の利用に向けては,ステークホルダーの対話を基盤とする合意形成が求められる。地域資源に関する新たな利用方法の導入および普及は,ステークホルダーの拡張とそれまでの関係性に変化をもたらすと考えられる。そこで本研究は,地熱資源の新たな利用方法として小規模地熱発電の導入を進めている大分県別府市を対象に,ステークホルダー間の潜在的な関係性を構造的に把握することを目的とする。本研究においては,小規模地熱発電ステークホルダーが関心を持つ論点を特定したマトリックスを用い,論点の共通認識に着目した2部ネットワークグラフを作成し,ステークホルダー間および論点間のネットワーク構造の分析を行った。結果,ほとんどのステークホルダー間で何らかの共通認識を持っており,全体としては密度の高い社会ネットワークを形成していた。ネットワークの構造同値性に着目したブロックモデルを作成した結果,小規模地熱発電の開発に携わる主体がネットワークの中心に位置し,導入検討を行う旅館経営者や泉源所有者,温泉資源にかかわる大分県や別府市の部署が周辺を取り巻く構造であることがわかった。1部論点ネットワークブロックモデルでは,「基本的な関心」や「地域住民の意識への配慮」,「地熱発電と温泉との因果関係」など,小規模地熱発電の概要や導入影響に関する基礎的な論点を中心に,「発電利用・経済的価値」や「関連知識獲得への関心」など,導入の具体的な検討に関する論点と,「観光地としての衰退」や「温泉文化の衰退」など,従来の温泉利用に関する論点が周辺を取り巻く構造であった。これらのネットワーク構造の分析結果より,別府市の小規模地熱発電導入においては,小規模地熱発電導入主体が従来の温泉資源ステークホルダーと関心を共有することで,顕著なコンフリクトの発生を回避していることが示唆された。

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