産業廃棄物系吸着資材のセシウムの植生と土壌浸出水への移行に対する抑制効果

抄録

本研究は，森林土壌サンプルに放射性セシウムの安定同位体であるセシウム133の添加によって調整されたセシウム汚染レベルが異なる3種類（0, 25, 50 mg kg⁻¹）の森林土壌に，ココナッツ殻バイオ炭，下水汚泥焼却灰，炭化汚泥をそれぞれ吸着資材として添加（添加量0, 5, 10％）し，ネピアグラスを対象にした室内ポット実験を行い，実験結果よりセシウムの植生と土壌浸出水への移行を定量的に評価するとともに，3種類の吸着資材によるセシウムの森林土壌から植生と水への移行に対する抑制効果の比較検討を行った。その結果，セシウム濃度調整ありの場合では，吸着資材添加なしに比べて，添加ありのいずれのケースにおいても植生や土壌浸出水へのセシウムの移行量が減少したため，吸着資材によるセシウムの移行に対する抑制効果が確認された。特に，10％を添加したココナッツ殻バイオ炭の方で抑制効果が顕著であり，セシウムによって汚染された森林土壌における同物質の移行拡散の抑制にバイオ炭が有効な資材になる可能性が示唆された。