環境科学会誌
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一般論文
液体クロマトグラフ-精密質量分析計を用いたPRTR物質の簡易スクリーニング手法の構築と下水試料への適用
髙沢 麻里鈴木 裕識小森 行也對馬 育夫山下 洋正小口 正弘
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2020 年 33 巻 5 号 p. 114-125

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抄録

本研究では,精密質量分析技術によるターゲットスクリーニング手法に着目し,その適用先として,物性が多様ながら一斉分析の需要があるPRTR制度の第一種指定化学物質(PRTR物質)を目的物質群として取り上げた。特に,事業者からの流入実態の把握が重要である下水試料を対象に,一斉かつ迅速に有無判定し,効率的な定量値取得が望める簡易スクリーニングプロセスの構築を主目的とした。まず,迅速な有無判定には,正確かつ豊富で機種依存性および試料依存性の低いデータベース(DB)が不可欠であることから,スクリーニングDB構築における標準品解析手順として,(1)3段階で希釈した標準品を無段階MS/MS法で測定し,(2)濃度に応じてスペクトル強度が増減しているプロダクトイオン候補を抽出した。(3)抽出されたプロダクトイオン候補と対象物質の元素組成の整合性を確認し,プロダクトイオンを決定した。以上の3点のプロセスにより,28種のPRTR物質におけるプロダクトイオンおよび保持時間情報を取得した。次に,DBの拡充を目的に,既存のDBから引用した情報を整理し,PRTR物質を81物質収録したPRTR-DBを構築した。10か所の下水処理施設から得た流入および処理水をPRTR-DBと突合した結果,スクリーニングにおいて39物質が検出された。不特定物質が含まれる試料に対し,一次スクリーニングを行うことで,定量が見込める物質の絞り込みが容易となった。その上で,定量を試みた結果,8物質が定量された。本調査から,各処理施設で検出される物質種,その数および定量値の変動が大きいことが明らかとなり,不特定物質の定量には事前スクリーニングが有効であるとともに,調査数(試料数)の増加による取得データの充実が重要であることが示唆された。本研究で構築した簡易スクリーニングプロセスは,DBへの登録物質数を増加しつつ,実測を繰り返すことで,さらに頑強なDBの構築が期待でき,また,異なる対象物質群にも応用可能である。

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