環境科学会誌
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一般論文
地域社会まちづくりステークホルダーにおける気候変動適応と地域課題の関係構造の把握—滋賀県高島市の事例—
木村 道徳 岩見 麻子河瀬 玲奈金 再奎馬場 健司
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2021 年 34 巻 2 号 p. 80-93

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抄録

2018年6月に気候変動適応法が公布され,地方自治体や事業者,国民においても気候変動適応に努めることとなり,地方自治体は地域気候変動適応センターの設置が努力義務ではあるが求められている。気候変動適応策は,気候変動影響評価の結果を受けて,悪影響を回避または軽減するための対策であり,社会実装を考える上では,基礎自治体レベルで地域特性を踏まえた検討が必要となる。しかし,気候変動影響評価については,国レベルの研究プロジェクトがいくつか実施され始めた段階であり,地域特性を反映させた影響評価情報が不足している。また,地域社会の多くは,少子高齢化人口減少や地域経済の縮小,地域コミュニティの衰退など様々な喫緊の課題を抱えており,不確実性およびコストの高い気候変動影響評価を独自に実施し,気候変動適応策に優先的に取り組むことは困難である。

このようなことから本研究では,基礎自治体を対象に気候変動適応策の社会実装に向けた論点設定を目指し,まちづくり分野に着目したステークホルダー分析を通じて得たインタビュー議事録を基に,計量テキスト分析により気候変動影響と地域課題間の関係構造の把握を行った。滋賀県高島市を対象とした調査の結果,地域課題のカテゴリーである「少子高齢化人口減少」や「まちづくり・地域コミュニティ」,「教育・子育て」などに多くのステークホルダーが関心を持っていた。また,気候変動影響分野については,約半数のステークホルダーが「水害」カテゴリーについて言及しており,比較的関心が高かった。しかし,主要な地域課題と災害に関する話題を関連づけているステークホルダーは少なく,適応策を検討するためには,既に気候変動影響を認識しつつある分野と地域課題をつなげるための論点設定が必要と考えられた。

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