水道水中に存在する農薬を迅速かつ網羅的に検査することを目的に,トリガーMRM法を用いた四重極LC-MS/MS装置による農薬スクリーニング分析法の開発と評価を行った。
本研究では,測定対象成分の標準品を測定せず,あらかじめ内部標準法を用いた検量線及びプロダクトイオンスペクトルをデータベースに登録された情報を基に定性・定量を行うターゲットスクリーニング分析法の検討を行い,水道水質検査への適用性について妥当性評価を行った。試料の前処理方法としては,固相抽出法を使用せず,水道水試料に内部標準物質を添加して,四重極LC-MS/MS装置に注入する前処理方法を採用した。
検討の結果,201種類の農薬及び代謝物中,定量下限値5 ng/Lを確保できたのは91種類,定量下限値10 ng/Lを確保できたのは46種類あり,合計137種類が定量下限値10 ng/L以上の高感度分析が可能であった。
また,スクリーニング分析用データベース作成後の41日間に,水道水への添加試験(100 ng/L; n=5併行試験,5日間)を実施した結果,試験を実施した171種類の農薬及び代謝物中164種類が真度70~130%に収まる良好な結果であり,171種類中170種類の農薬及び代謝物の真度がスクリーニング分析法の開発目標値として定めた真度50~200%を満たした。併行精度は全171種類が30%未満であり,室内精度は171種類中170種類が35%未満と良好な結果が得られた。
これらの結果は,本スクリーニング分析手法を水道水に適用することが有効であることを示している。