環境科学会誌
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一般論文
固相抽出-LC/MS法による水道水中界面活性剤の一斉分析法の検討及び妥当性評価
木下 輝昭 小田 智子山崎 貴子栗田 翔鈴木 俊也中嶋 順一守安 貴子
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2022 年 35 巻 2 号 p. 83-93

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抄録

PRTR制度の対象物質の中から選定した界面活性剤について,水道水における非イオン界面活性剤の告示法を用いて測定を行ったところ,検水に両性界面活性剤のN,N-ジメチルドデシルアミン=N-オキシドや陰イオン界面活性剤のポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸エステルナトリウムが存在する場合,偽陽性となることが分かった。また,固相抽出操作において,非イオン界面活性剤以外の各種界面活性剤の挙動を調査するため,溶出溶媒の検討を行った。各種界面活性剤のトルエン画分及びメタノール画分の回収率の合計は60~120%であった。全種界面活性剤について,溶出溶媒をメタノールとした固相抽出-LC/MSによる一斉分析法を用いて妥当性評価を実施したところ,非イオン界面活性剤及び一部の陰イオン界面活性剤を除く各種界面活性剤において,妥当性評価ガイドラインの評価目標である真度70~130%及び併行精度20%未満を満足していた。非イオン界面活性剤,陰イオン界面活性剤のヘキサデシル硫酸ナトリウム及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS-C12~C14)は,溶出溶媒を極性のメタノールに変更したため,真度が低くなったと思われる。これらの結果から,本法は,一部の界面活性剤について妥当性評価ガイドラインの真度の評価目標を満たさなかったが,50%以上の真度が見られることから,各種界面活性剤の存在の有無を判定するスクリーニング法として有用であると思われる。

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