名古屋大学構内において大気中メタン濃度を連続測定し,1991~95年の観測結果に対して多変量解析を行った。その際,同時期に名古屋市環境保全局により測定されたメタン濃度のデータを加え,名古屋市における大気中メタンの動態解析として,メタン濃度値に対してクラスター分析を試みた。メタン濃度の経年変化の挙動に対する解析結果では,距離測度として相関係数を用いることで,名古屋市は都市域と水田地域に,さらに都市域に関しては地域ごとに分類された。続いてユークリッド距離を用いたクラスター分析結果では,名古屋大学と東桜がクラスターを形成し,メタン濃度値との比較から特に高濃度で推移していたクラスターであることを示した。次に,メタン濃度増加速度の変動要因に関する知見を得るために,時系列解析を行った。名古屋大学で測定された1991年~96年のメタン濃度値をフーリエ変換し,高周波数カットオフフィルターを通すことで,長期的な増加率の変動曲線を得た。1993年~95年にかけて1992年より大きな増加速度の減少傾向が見られた。最後に,名古屋市を対象とした排出原単位から求められた排出量を用いて,名古屋市からのメタン流出量を2.0~2 .7tCH4km-2yr-1と算出した。