環境科学会誌
選択型コンジョイント分析を用いた飲料水に対する消費者の受容性評価
中谷 隼志摩 学荒巻 俊也花木 啓祐
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19 巻 (2006) 4 号 p. 355-364

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抄録

 近年,水道水の需要側では,飲料水は安全であるだけでなく,「おいしい」ことが求められるようになってきた。その一方で,水道水の供給側では,エネルギー消費量などに代表される地球環境への影響を考慮に入れた意思決定が求められている。本研究では,現状の水道水の質があまり良くないとされる東京都北区と,水道水の質が比較的良いとされる東京都武蔵野市を対象としてアンケート調査を実施し,選択型コンジョイント分析を用いて,水道水の供給によるエネルギー消費量と飲料水の質(味および臭い)に対する受容性を,WTP(支払意志額)として貨幣単位で評価した。同時に,高度処理をした飲料水を生活用水と分けて供給する二元給水システムに対する消費者の評価を調べた。 解析結果から,北区および武蔵野市の住民は,エネルギー消費量の減少や,飲料水の味および臭いの改善に対して一定の価値を感じていることが分かった。飲料水の味や臭いの改善に対する評価は,両地区で差があるとは言い切れなかった。現状の水道水の質に対する満足度の差(武蔵野市の住民は,北区の住民と比べて満足度が高い)は,北区の住民については二元給水という新しいシステムに対する期待感があり,武蔵野市の住民については現状維持を望む傾向が強いという形で評価結果に表れた。また,エネルギー消費量の減少に対する評価は,北区の住民よりも武蔵野市の住民の方が高いことが示された。ただし,現状の水道水の質に対する満足度が高い回答者ほどエネルギー消費量の減少に対する評価が高いという傾向は,北区についても武蔵野市についても見られなかった。本研究の結果は,水道水の質に対する満足度が高くなることは,消費者が省エネルギー型の飲料水の利用形態を受容するための必要条件ではないことを示唆している。

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