環境科学会誌
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汚染土壌の直接摂取に関する健康リスク評価の導入による土地利用別の対策費用軽減効果
保高 徹生松田 裕之中島 誠武 暁峰
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2007 年 20 巻 1 号 p. 29-45

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抄録

 近年,工場跡地等において鉛による土壌汚染が顕在化しており,その対策費用が土地所有者にとって大きな負担となっている。現在,土壌汚染が顕在化しているのは主に地価が高い首都圏であり,土地売却益から対策費用を捻出できる事例が多い。しかしながら,土壌汚染の顕在化が今後想定される地方都市では,地価が安いため対策費用を捻出できずブラウンフィールドとなることが懸念されている。ブラウンフィールドとは,有害物質の存在(もしくはその存在の可能性)によって,拡張・再開発・再利用が困難になっている土地のことである。1980年代からブラウンフィールド問題に取組んでいる欧米では,サイト毎のリスク評価の実施や土地利用に応じた管理目標値の適用といった柔軟な汚染土壌管理の手法を取り入れている。一方,日本では汚染土壌の直接摂取によるヒトの健康リスクは,一律の基準値である土壌含有量基準(鉛は150mg/kg以下)により判断されている。しかし土壌含有量基準の設定においては,小児は感受性が高いことを考慮していない点,および一般環境からの鉛の摂取量をTDI(一日耐容摂取量)の90%としている点において,日本の鉛汚染土壌に起因するヒの健康リスクを十分に評価できていない。本研究では,現行の鉛の土壌含有量基準の設定におけるリスク評価の問題への解決策として,汚染土壌以外の経路からの鉛摂取量を算出し,年齢群別,土地利用別にリスク評価を実施し,汚染土壌の直接摂取に係る管理目標値を算定した。また,管理目標値を鉛汚染土壌が確認された10サイトに適用し,対策費用削減効果を検討した。その結果,汚染土壌の直接摂取に係る土地利用別の管理目標値は,工・商用地で最大値の5,100mg/kgとなり,土壌含有量基準よりも大きな値となった。また,対策費用減少率は,最も削減効果が大きい工・商用地で96%であり,土地利用の種類により対策費用が大幅に削減可能であることが確認された。これらの結果は,土地利用を考慮したヒトの健康リスク評価に基づく汚染土壌の直接摂取に係る管理目標値の導入が,日本においてより柔軟な汚染土壌管理を可能にすることを示唆している。なお,本リスク評価では,土壌溶出量基準により規制されている土壌から地下水への溶出に起因する地下水飲用等の暴露経路は考慮していない。土壌含有量が管理目標値に適合した場合においても,土壌溶出量基準を超過する溶出量が確認された場合は,別途対応が必要である。

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