環境科学会誌
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流域における水・物質・エネルギーの循環評価のためのプラットフォームの開発
近藤 明鳴海 大典下田 吉之加賀 昭和
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2007 年 20 巻 3 号 p. 215-223

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抄録

 流域における二酸化窒素二酸化硫黄光化学オキシダントなどの大気汚染やBODやCOD,T-N,T-Pなどの水質汚染の挙動を包括的に扱うことができる統合モデルを開発した。統合モデルは,気象モデルと水文モデルとこれらのモデルで計算された拡散場を用いる大気汚染物質輸送モデルと水質汚濁物質輸送モデルから構成される。モデルが必要とする国土地理院の土地利用データ,標高データ,河川データなどの3次メッシュデータは,GIS上で操作できるように整備した。人工排熱と汚染物質排出量の3次メッシュデータは,各種統計データをベースにして作成した。淀川流域を対象に,統合モデルから出力される風速,気温,水量,NO・NO2・03濃度BOD ,COD,T-N,T-Pの計算結果は,観測値と比較された。一部のモデルと入力データに関しては改善の余地があるものの,統合モデルは,かなり精度良く流域環境を再現することができた。また,近年問題になっている微量有害化学物質に関しては,河川,土壌,底泥間の移動を考慮した化学物質動態解析モデルを開発した。AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を対象にPRTR届出排出量とPRTR届出外排出量推定データから排出量の空間分布算定を行い,河川,土壌,底泥でのAE濃度計算を実施した。このモデルをベースに大気間との移動も考慮できるマルティメディア物質循環モデルへと展開することを考えている。

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