環境科学会誌
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オゾン曝露が樹木からのBVOC発生量に及ぼす影響に関する研究
包 海近藤 明加賀 昭和井上 義雄多田 将晴
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2008 年 21 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

 森林植生からの揮発性有機化合物(BVOC)の発生量がオゾン暴露に対する影響に関しては,まだ不明点が多い。グロースチャンバーを用い,日本の代表的な樹種である針葉樹のスギ(Cryptomeria japonica),ヒノキ(Chamaecypayis obtusa),アカマツ(Pinus densiflora)及び広葉樹のコナラ(Quercus serrata)の4種類の樹木を,2005年秋と2006年夏に,オゾン濃度200ppbと100ppbに曝露する実験を実施した。グロースチャンバー内気温は大阪の夏季の日変動気温に制御し,PARは午前7時から午後7時まで335μmolm-2s-1一定値にした。実験は樹種ごとに3日間連続で実施し,実験2日目に樹木にオゾンを曝露した。BVOCを午前7時から午後7時まで1時間ごとにサンプリングし,暴露前日,暴露日,暴露翌日の1日(測定時間12時間)ごとの総発生量を算出した。 針葉樹のスギ,ヒノキ,アカマツからはα-ピネン,β-ピネン,β-ミルセン,α-フェランドレン,α-テルピネン,リモネン,γ-テルピネン,テルピノレンの8種類のモノテルペン類とp-シメンを検出した。スギ,ヒノキ,アカマツにオゾンを暴露すると,実験2日目の暴露日のα-ピネン発生量は,実験1日目のそれの40~75%に減少したが,実験3日目には65~100%に回復した。スギ,ヒノキ,アカマツにオゾンを暴露すると,実験2日目の暴露日のβ-ピネン発生量は,実験1日目のそれの22~75%に減少したが,実験3日目には40~95%に回復した。広葉樹のコナラからはイソプレンが検出できた。コナラの200±5ppbオゾン暴露実験の場合,実験2日目の暴露日のイソプレン発生量は,実験1日目のそれの88~96%に減少したが,実験3日目にはほぼ実験1日目の発生量に回復した。100±5ppbのオゾン曝露実験の場合,オゾンを曝露しても発生量に影響はなかった。以上の結果より,針葉樹からのBVOC発生量はオゾン暴露に強く影響を受けるが,コナラからのイソプレン発生量は,200ppbのオゾン暴露の場合はわずかに減少したが,100ppbのオゾン曝露下での影響は見られなかった。

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