環境科学会誌
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青森県地域生態系におけるCO2収支
澤田 信一清野 貴幸土岐 剛史
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1995 年 8 巻 2 号 p. 139-153

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抄録

 青森県の全面積(961×103ha)の67%は森林であり,また農耕地が18%を占めている。人口密度が低く,産業は一次産業が中心で,二次産業以上の産業は極めて少ない。この様に,本県はCO2固定者である森林生態系および農業生態系での一次産業が大きな割合を占め,一方において,CO2放出者である二次産業とその他の産業及び地域の人間社会が小さな割合を占めているのが特徴である。そこで,青森県を一つの地域生態系として捉えて,CO2収支の算定を行った。その結果,県全体の植物体の現存量は27.6×106t・C/y,また純一次生産量は4.2×106t・C/yで青森県の面積および人口当たりの現存量と純一次生産量は全国で9番目の値であった。県内の森林生態系,河川・湖沼および農業生態系における土壌呼吸量,各産業および人間生活における物質とエネルギー消費に伴う総CO2放出量は8.2×106t・C/yであり,森林生態系,河川・湖沼および農業生態系における植物の純一次生産による総CO2固定量は,総CO2放出量の1/2であった。総CO2放出量の72%が石油製品の消費および電力生産の際の石油消費によるものであった。この地域生態系と他の系との間での炭素換算の物質移出入において,移入量は移出量の13倍であった。移入量の89%が石油製品および電力生産のための重油で,移出量のほとんどが一次生産物および二次生産物とこれらの加工品であった。以上の知見に基づき,この地域生態系におけるCO2収支の改善方法についても議論した。

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