抄録
東京都区内の河川において,抗生物質耐性黄色ブドウ球菌の分布を調査したところ,多種多様な耐性菌が多量に河川水中に存在していることが明らかになった。これら黄色ブドウ球菌の汚染源は降雨時に下水道管から越流した下水と考えられた。黄色ブドウ球菌は多様な感染症と食中毒を引き起こすことが知られており,これらが抗生物質耐性を持っならば,それらの治療はより困難となると考えられる。 一方,河川水から分離,純化,同定した58株の黄色ブドウ球菌の11種類の抗生物質に対する感受性を試験した結果,これらのほとんどがペニシリンとメチシリンに耐性を持つことが明らかとなった。さらに,これらの約60%が多剤耐性を有することも明らかとなった。