抄録
目的:全部床義歯装着者の咀嚼能力向上を目的とし,これまで様々な形態の人工歯が考案されてきた.そのなかの一つにブレードティースがある.しかしながらブレードティースが咀嚼能力の向上,義歯の安定にどの程度寄与するのか,必ずしも明確ではない.そこで,本研究では,ブレードティース義歯装着者の咀嚼能力を検証することを目的とした.
方法:被験者は一般歯科診療所にて,上下顎全部床義歯を装着した無歯顎患者のうち,ブレードティースを排列した義歯を装着した患者4名(以下,ブレード義歯群),解剖学的形態を有する一般的な硬質レジン人工歯を排列した義歯を装着した患者5名(以下,ノーマル義歯群)の合計9名とした.評価方法として,最大咬合力測定,摂食可能食品アンケート法を利用した咀嚼能力評価,義歯満足度調査を行い,ノーマル義歯群,ブレード義歯群間で比較検討した.
結果と考察:ノーマル義歯,ブレード義歯群間の比較で,最大咬合力,咀嚼スコアに有意差は認められなかったが,咀嚼時に特に剪断力が必要な食品群内の食品間,義歯群間の比較において有意差が認められ,ブレード義歯の方が,剪断力に優れることが示された.またノーマル義歯群では最大咬合力と咀嚼スコアには有意な相関関係が認められたのに対し,ブレード義歯群に関しては最大咬合力と咀嚼スコアとの間に相関関係は認められなかった.よってブレード義歯は咀嚼時に剪断力を必要とする食品の咀嚼,最大咬合力の小さい患者に対し,臨床的に高い有用性がある可能性が示唆された.