日本顎口腔機能学会雑誌
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特別講演
親子間相互作用が結ぶ言の葉のはじめ-認知発達ロボティクスからのアプローチ-
浅田 稔
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2016 年 22 巻 2 号 p. 95-103

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抄録

本稿は,日本顎口腔機能学会第55回学術大会において,『親子間相互作用が結ぶ言の葉のはじめ』と題した特別講演の内容をとりまとめたものである.最初に講演者らが提唱し,推進してきた認知発達ロボティクス1,2)の概要を説明した.認知発達ロボティクスのキーアイデアは「身体性」と「社会性」であり,これらをシームレスで結びつける基盤が発達である.
講演では,身体性,社会性,発達をキーにした認知発達の凝縮課題の一つが記号創発であると捉え,その研究分野の一例として,「音声の知覚と発声の発達」課題をとりあげた.乳幼児のランダムなクーイング期(およそ4ヶ月頃)やバブリング期(およそ5~6ヶ月頃)から母音発声に至る過程は,母親とのさまざまな相互作用を通じた記号創発過程と見なせる.最初に,認知発達ロボティクスの観点から,母子間相互作用による言語獲得過程に焦点をおいた音声の知覚と発声に関する基本課題を示した.次に,認知発達ロボティクスで行われてきた関連研究を紹介した.母親が持っているバイアスとして,知覚範疇化や構音機構の拘束にによるマグネット効果に加え,自身を模倣してくれるという期待から生じる解釈の偏り(自己鏡映バイアス)のモデルを紹介し,いかに身体性や社会性が密に関連しているかを示し,最後に,今後の課題を議論した.

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© 2016 日本顎口腔機能学会
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