抄録
歯列弓は各歯の咬頭頂を結ぶ曲線であり, 咬合を形態的に構成し, 補綴臨床において咬合再構成を行う際の重要な要素の1つである.本研究は, 咀嚼運動に及ぼす歯列弓形態の影響について検討し, 歯列弓形態の機能的意義を明らかにしようとしたものである.
個性正常咬合者100名を選択し, 犬歯尖頭と第一大臼歯を基準として, 第二大臼歯, 小臼歯の座標を推定する重回帰式を求めた.被験者を上下顎の臼歯の相対的な頬舌的位置関係により, 正常群, 上顎第二大臼歯が頬側に位置する群, 上顎第二大臼歯が舌側に位置する群, 上顎小臼歯が頬側に位置する群, 上顎小臼歯が舌側に位置する群に分類した.咀嚼運動の記録はSGG/ASIIIを用い, 咀嚼運動の分析は前頭面, 水平面, 矢状面の3平面における咀嚼運動の開口路, 閉口路を丸山の分類に基づいて行った.歯列弓形態と咀嚼運動径路との関連性を求めた.
結果として、歯列弓における頬舌的な歯の位置を判定する客観的な評価基準を確立し, これに基づく歯列弓形態の分類が可能になった.また, 歯列弓形態が咀嚼運動に影響を及ぼすことが明らかになり, 歯列弓形態の評価が顎口腔機能の診断に有効であることが示唆された.