日本顎口腔機能学会雑誌
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咀嚼時に観察される上顎の協調運動記録の試み
荒井 良明松山 剛士河野 正司斎藤 彰平野 秀利
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1994 年 1 巻 1 号 p. 183-188

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抄録
咀嚼運動は, 咀嚼筋, 頭頸部の諸筋, 舌筋, その他の口腔軟組織の協調活動によって行われるリズミカルな運動である.咀嚼リズムに同期した筋活動が, 咀嚼筋のみならず胸鎖乳突筋などの頭頸部の筋や舌筋にもみられ, 頭部の位置を制御あるいは駆動する神経筋系が, 下顎運動との協調性を示している報告はある.
これらの神経筋の協調活動によって, 下顎と共に上顎, つまり頭部もリズミカルな協調運動をしていることが推測できるが, いまだその報告はない.
そこで本研究では, 咀嚼時の頭部の協調運動の存在を明らかにすることを目的として, 咀嚼運動時における上顎切歯点の三次元運動を, 下顎切歯部の三次元運動と同時に記録した.
その結果, 咀嚼の各ストローク開始点における上顎切歯点の位置は, 咀嚼の進行に伴い偏位方向が周期的に変化しており, 上顎切歯点の運動には周期性が存在した.
また咀嚼の一ストロークについてみると, 上顎切歯点の前頭面運動経路は, 下顎と同様に閉曲した弧を描いた.さらに各ストローク終末位の直前0.2秒間の上顎切歯点は, いずれも非咀嚼側へ運動していた.
タッピング運動において, 上顎切歯点は開口時上方に閉口時下方に運動し, 側方への運動は小さかった.
以上のような咀嚼時における頭部の協調運動と考えられる上顎切歯点部の運動が観察された.
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