現代の社会病理
Online ISSN : 2436-2174
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特集
出所者はいつまで(元)犯罪者として生きることを強いられるのか?
−はじきだされる場/やりなおす場としての地域・都市−
掛川 直之
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2021 年 36 巻 p. 21-36

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抄録

近年、再犯防止を主とする日本の刑事政策の潮流は、出所者/( 元)犯罪者に対してはもちろん、かれらを受入れるわたしたちにも変わることを求めている。他方、出所者支援に専門性が付与されていく過程のなかで、ますます出所者は地域のなかで(元)犯罪者である、という位置づけがより強固なものにされていく危険性を帯びている、とも考えられる。罪を犯すことによって失う最たるものが「信頼」であるとすれば、支援者はその「信頼」を一時的に補填し、かれらと地域の住民との関係性に働きかけつつ、かれらが地域社会において再び「はじきだされる」ことなく「やりなおす」ことを支えていく存在になることが求められる。地域・都市に、異端者としてはじきだされてきた「犯罪者」として、再度、地域のなかでやりなおしを強いられる「出所者」として、そして、いずれにしても社会から排除される存在としてのかれらが、わたしたちとともに暮らす一人の隣人として生きていくためには、わたしたちの側もかれらとともに変わっていかなければならない。

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© 2021 日本社会病理学会
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