社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
論説
雑誌『家の光』に見る農村社会における学歴アスピレーションの高まり
第一次ベビーブームの親世代に着目して
小林 博志
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キーワード: 学歴, テレビ, 『家の光』
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2021 年 105 巻 p. 61-85

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抄録

 本稿では、農協婦人部の機関誌的存在である雑誌『家の光』を通し、第一次ベビーブームの親世代に着目して、高度経済成長期の農村社会における学歴アスピレーションの高まりについて考察する。一九五〇年代からの生活改善運動の展開と、一九六〇年代のテレビ普及を背景に、家族計画を一つの契機として教育への関心が高められ、その関心は子どもの成長と共に学歴取得へと向けられる。兼業化の加速による農外収入の増加と、テレビ普及による近代家族的価値観の浸透によって、工業製品の普及だけでなく、高卒という学歴も都市と同様に取得され、農村の都市化が進展する。これにより、消費財という「モノ」だけでなく、学歴という「経歴」も一般化していく。それは、都市と農村が共有しうる、「人並み」という生活水準意識の一端が形成されていく過程でもある。

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© 2021 東北社会学研究会
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