空気調和・衛生工学会 論文集
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CFD連成解析を用いた室内温熱環境の最適設計システムの開発 : 第1報-最適設計手法の原型作成とその応用
金 泰延加藤 信介村上 周三
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2002 年 27 巻 84 号 p. 53-60

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抄録

本研究は,CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体)連成解析を用いた室内温熱環境の最適設計システムの開発を最終の目的とする.この最適設計システムは,室内温熱環境形成にかかわる諸現象(対流,放射熱,湿気輸送など)を連成した解析を行い,その環境を最適化する観点から定量的に評価し,その評価値が設計目標になるように設計パラメータ(例えば,室形状,空調システム,吹出し口の位置など)を修正するフィードバックの論理を含むものである.このフィードバックの論理はCFD連成解析を設計手法として用いるための基礎となるものである.本研究では,最適化の評価,設計パラメータ修正方法などの最適設計システムの理論を整理し,その原型を作成する.開発された最適設計システムの有効性を検討するため,オフィス空間を解析対象とし,室内温熱環境の最適化を行う.室内温熱環境の評価においては,評価項目に優先順位(上位と下位)を与える.本解析では人体の温冷感を上位の評価要素とし,最適化の過程でその評価値が必ず目標値になるという条件で解析を行う.下位の評価要素は,空調投入熱量と有効ドラフト温度とする.この下位の評価要素は,評価値による設計パラメータ変更のフィードバックは行わないものとし,最適化の程度の評価のみに用いる.最適化のために修正される設計パラメータに関しても,優先順位(上位,中位,下位)を与える.本研究では,設計パラメータとして吹出し口の位置と形状,吹出し口の風量,吹出し口の温度を与え,それぞれ上位,中位,下位の設計パラメータとする.本研究での条件において,吹出し口の位置と形状の違いは,空調投入熱量に対してはほとんど影響がないのに対し,温度分布・気流分布により評価する有効ドラフト温度には影響が現れた.この解析により,最適化された設計パラメータの設定値とその時の温熱環境が得られた.

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© 2002 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
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