2006 年 31 巻 115 号 p. 9-17
本論文では地下水流れを有する場合の、地中熱交換器周囲の地中温度の計算手法とその応用について報告する。まず、地下水流れを有する場合の土壌内の線熱源と円筒熱源の温度応答の比較検討を行った上で、円筒熱源周囲の地中温度の計算方法を示した。次に、2本の地中熱交換器を用いた場合の地中温度計算について、本計算方法と数値計算の比較を行い、本計算方法の計算精度を検証した。さらには、本計算方法を用いて地下水流れが土壌熱源ヒートポンプシステムの性能と導入効果にもたらす影響について検討を行った。札幌市の戸建住宅に、単独埋設管の土壌熱源ヒートポンプシステムを導入した場合について、運転シミュレーションとコスト分析を行った結果、全ての地層に地下水流速100m/yearが流れると仮定した場合では、地下水流速0mの場合と比較して、地中熱交換器長さを45m削減できることを示した。このことから地下水流れを設計に反映することにより、システムのイニシャルコストの削減を効果的に行えることが示唆された。