空気調和・衛生工学会 論文集
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分岐管内の流動機構 : 第10報-枝管入口に丸みを有する分岐管の乱流における流動様相
嵩 哲夫藤井 清美
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1984 年 9 巻 26 号 p. 39-49

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抄録

乱流における分岐管内の流動様相を研究した.研究で対象とした分岐管は,分岐角度θ_0が90°で面積比mが1.0であり,枝管入口上流端に丸みを有するものと枝管入口上流および下流端に丸みを有するものであるが,ここでは前者をwr,後者をwrrと呼ぶことにする.ただし,丸み半径は,いずれの場合も枝管幅h_2^*に等しくとる.また,枝管入口上流および下流端に丸みのない分岐管をworと呼ぶことにする.得られた結果を要約すれば,次のとおりである.1)wrとwrrに対する二次元乱流場が,乱流エネルギkとその逸散率εに注目したモデルによって数値的に解かれた.計算においては,レイノルズ数R_<1h>を3.75×10^4に固定して流量比Q_2^*/Q_1^*を0.0から1.0まで0.2おきに変化させるとともに,Q_2^*/Q_1^*を0.4に固定してR_<1h>を5×10^3,1×10^4,2×10^4および7.5×10^4に変化させた.2)wrとwrrにおける枝管内に生ずるはく離の程度は,worの場合に比較すると減少する.その減少の程度はR_<1h>が同一であればQ_2^*/Q_1^*の増加とともに著しくなるが,Q_2^*/Q_1^*が同一であればR_<1h>の影響はあまり受けない.3)wrとwrrにおける主管内に生ずるはく離は,worの場合と同様に,R_<1h>が同一であればQ_2^*/Q_1^*が十分大きくなると発生する.その程度は,一般に,worとwrの場合はほぼ同じであるが,wrrの場合はこれらよりも小さくなる.4)wrrにおけるせき止め点は,R_<1h>が同一であればQ_2^*/Q_1^*の増加とともに枝管下流のほうへ移動するが,Q_2^*/Q_1^*が同一であればR_<1h>の影響はあまり受けない.したがって,5)一般に,R_<1h>が同一の場合,wrとwrrにおける枝管内速度分布の偏りはQ_2^*/Q_1^*の増加とともに減少し,かつ,worの場合に比較して小さくなる.また,主管内におけるwr,wrrとworにおける速度分布の偏りはQ_2^*/Q_1^*の増加とともに増大するが,枝管入口形状の変化による影響はほとんど受けない.さらに,Q_2^*/Q_1^*が一定のとき,枝管内における速度分布の偏りはR_<1h>の増加とともに増し,主管内においてはR_<1h>の増加とともに速度分布が偏平となる.6)長方形断面を有する実際の分岐管内の乱流における流動様相が,流れを可視化することによって観察された.その際,R_<1h>は数値解析の場合と同様に選定し,Q_2^*/Q_1^*は各々のR_<1h>に対して0.0から1.0まで0.2おきに変化させた.その結果によると,乱流におけるwrとwrrの平均流の様相は,層流におけるものに類似していることがわかった.また,7)平均流に関して実験によって得られた結果と数値解析によって得られた結果は,定性的に一致することがわかった.ただし,Q_2^*/Q_1^*が大きくなると,両者による結果には差異が生ずる.

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© 1984 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
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