2017 年 15 巻 2 号 p. 143-155
本研究では、往復に支障のない範囲にある二つの国を想定し、それぞれの市民が自国内あるいは国境を越えて他国を自由に観光目的の旅行が可能な状況を分析する。両国政府は、それぞれの国内で適切な税を課し、その税収を用いて、治安、公共施設、自然地帯、人工景観建設などの観光インフラ整備を行うことにより、自国の社会厚生を最大化するよう行動する。各国には観光産業があり、両国政府の提供する観光インフラを前提に、それぞれの観光サービスの料金を選択することにより、顧客の獲得に基づく利潤最大化を目的に競争する。上記のように、両国の市民はそれらを前提条件として、自らの効用を最大化するように国内および他国への観光回数を選択する。本研究では、この状況を3段階の連続ゲームとして分析することにより、政策的な示唆を得ることを目的とする。ただし、一般的な理論解の比較が困難なことから、最終的には消費者の選好を表す特定のパラメータを複数仮定してシミュレーション分析を行うことにより、代表的なケースの比較静学的な特徴を明らかにする。