人間環境学研究
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原著
目標の達成可能性が制御資源の節約に与える影響
人々は日常的に、複数の目標を同時に追求している。他方、目標達成に必要な制御資源は有限であることから、それぞれの目標に対して十分な労力を常に投入できるとは限らない。先行研究では、2つの目標を連続して遂行するとき、後続の目標の達成が難しいほど、その目標に向けて制御資源が節約されることが示されてきた。他方、動機づけ強度理論に基づくと、後続の目標の達成が極めて困難であり、達成が不可能と認知されると、その目標に対して制御資源は節約されなくなると予測される。この予測を検証するため、本研究では38名の大学生を対象とした実験室実験をおこなった。実験でははじめに、2つの異なる認知課題(ストループ課題・数字暗記課題)を順番におこなうと説明した。その際、後続の課題(数字暗記課題)の内容に関する教示を変えることでその課題の達成可能性の高低を操作し、先行の課題(ストループ課題)の遂行が変化するかを検証した。結果、数字暗記課題の達成可能性が低い(不可能)条件の参加者は、統制条件の参加者と比べて、ストループ課題の遂行が有意に高いことが示された。すなわち、後続の目標の達成が不可能だと認知されると、先行の目標の遂行において制御資源は節約されないという、動機づけ強度理論の予測に整合する結果が得られた。考察では、目標競合時の自己制御に対する介入方略の可能性や本研究における限界について議論した。
櫻井 良祐渡辺 匠唐沢 かおり
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2017 年 15 巻 2 号 p. 87-92

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