人間環境学研究
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伊庭貞剛(住友財閥)
価値共創経営の先駆者
竹原 正篤長谷川 直哉
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 17 巻 2 号 p. 153-161

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抄録

現代社会は多くの課題に直面している。グローバル化やイノベーションの進展は経済成長を加速させたものの、同時に、地球温暖化や資源の枯渇化、格差の拡大など深刻な環境問題や社会問題を引き起こしている。このような地球規模の課題に対応するためには、高度な社会的・経済的倫理観に裏付けられたサステナビリティ社会の構築が不可欠となっている。こうした風潮の下で、コーポレートガバナンス(Corporate Governance)、企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)や共通価値の創造(CSV: Creating Shared Value)への関心が高まり、企業は様々な取り組みを進めている。現代社会が希求している経済的価値と社会的価値が調和したサステナビリティ社会の実現を目指した取り組みは、明治期のわが国企業の経営者によって推進されていた。その代表的な経営者の一人が住友第二代総理事の伊庭貞剛である。伊庭は、住友が経営していた別子銅山の操業によって生じた煙害問題を解決するため、別子銅山支配人として改革の陣頭指揮をとった。伊庭は社内外からの批判や圧力に晒されながらも製錬所の移転を決断するとともに、大規模な植林活動を通じて自然環境の再生を図り、長期的な展望をもって鉱害問題の根本解決の道筋をつけた。伊庭が掲げた社会全体を利することを目的とした事業理念や別子銅山煙害問題の完全なる解決を目指した行動は、CSRやCSVを通じて現代企業に求められている概念と共通する要素が多い。本稿では、現代が希求しているサステナビリティ社会の実現を先取りした伊庭の理念と行動を経営史的手法を用いて論じた。

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