1991 年 41 巻 230 号 p. 339-349
1 kbar,400~800℃の条件下における CaSiO3-MnSiO3-H2O 系鉱物の安定関係をイオン交換法を用いた実験により求めた.この実験では,陽イオンCa 2++とMn 2+の移動媒体として塩化物水溶液を使用した.本実験で出現した鉱物は,珪灰石,バスタム石,バラ輝石,パイロクスマンガン石,ゾノトラ石,ヨハンセン輝石の6鉱物である.
バラ輝石は,パイロクスマンガン石の高温相であり,その転移温度は化学組成により変化する.純粋なパイロクスマンガン石は,725℃でバラ輝石に転移し,バラ輝石,パイロクスマンガン石,バスタム石の3相は,525℃で共存する.バスタム石は,組成,温度に関して広い安定領域を示す.ヨハンセン輝石は450℃以下でバスタム石の代わりに安定となる.珪灰石とゾノトラ石との間の転移温度は475℃と求められた.
マンガンイオンは,鉱物中に濃集しやすく,カルシウムイオンは塩化物水溶液に濃集しやすい傾向を示し,この傾向は温度の低下に伴い著しくなる.